事務室の机に来年度の入園申込のお知らせと園児名簿、卓上カレンダーを広げ、募集の時期を指でたどって確かめている保育園の事務担当者

保育園の入所選考|一次・二次募集と欠員募集の年間スケジュール

「来年の4月の申込みって、いつからでしたっけ」——8月の事務室で、園長先生からそう聞かれてカレンダーをめくった経験はないでしょうか。自治体からの通知はまだ届いていない。でも見学の問い合わせはもう増えはじめている。去年どうしたかを思い出そうとして、去年の自分もたぶん同じことをしていた気がする。

入所選考のスケジュールは、園が決めるものではなく市区町村が決めるものです。だから園の事務は、毎年「待ってから動く」形になりがちで、一年の全体像が手元に残りにくい。今日は、その全体像を園の目線で一枚に並べ直してみましょう。

結論:園がつかんでおくのは、①秋の一次募集、②年明けの二次募集、③毎月動く欠員募集——この3つの流れと、それぞれで園から自治体へ出す「空き枠の数」です。園が申込みを受け付けるわけではありません。園の仕事は、受け入れられる人数を正しく数えて期限までに伝えることと、内定が決まったあとを滞りなく回すことの2つ。この線引きが決まると、保護者からの問い合わせにも落ち着いて答えられるようになります。

何が起きているか:園は「選ぶ側」ではなく「枠を出す側」

認可保育所や認定こども園(2号・3号)の入園は、保護者が市区町村に申し込み、市区町村が利用調整——申込者の状況を点数などで比べて、どの園に何人入れるかを決める手続き——を行って決まります。園が申込書を受け取って選ぶ仕組みではありません。

そのため、園の事務が募集の時期に関わる場面は、実はそれほど多くありません。大きいのは次の3つです。

この3つのうち、いちばん見落とされやすいのが最初の空き枠の報告です。締切が事務の繁忙期と重なりやすく、しかも数え間違えると影響が長く残ります。多く出しすぎれば配置が足りなくなり、少なく出しすぎれば入れたはずの家庭が入れません。どちらも、あとから静かに効いてくる種類の間違いです。

そして募集は一度で終わりません。秋の一次、年明けの二次、そして年度に入ってからの毎月と、波が三度来ます。園の側から見ると「終わったと思ったらまた来る」感覚になりやすく、これが一年の見通しを持ちにくい理由でもあります。

一年の流れを3つの波で並べる

秋の一次募集、冬の二次募集、年度中に毎月続く欠員募集という三つの時期を左から右に並べ、それぞれで園がすることを示した図
募集は年に一度ではなく三度の波で来ます。園から出すものは、どの波でも「年齢別の空き枠の数」です。

具体的な時期は自治体によってかなり違います。ここでは多くの自治体でよく見られる形を並べますが、必ずお住まいの市区町村の入園案内で確認してください。

①一次募集(秋)。翌年4月入園の申込みを受け付ける、いちばん大きな波です。案内の配布や申込受付が10月から12月ごろ、結果の通知が1月から2月ごろという自治体が多く見られます。園の動きはその前から始まります。夏の終わりから秋にかけて見学の問い合わせが増え、9月から10月ごろに市区町村から空き枠の報告依頼が届きます。ここで出す数字は、進級後のクラス編成を前提にした年齢別の受入可能数です。

②二次募集(年明け)。一次で定員に満たなかった枠や、内定辞退で空いた枠を対象に、1月から2月ごろに申込みを受け付け、2月から3月ごろに結果が出る形が多くあります。園の側は、一次の内定者の入園手続きを進めながら、二次の空き枠を出し直すことになります。一次と二次が時期的に重なるため、どちらの話をしているのか園内で取り違えやすい場面です。

③欠員募集(年度に入ってから毎月)。年度途中の空きは、毎月受付・毎月選考という自治体が多く、園は毎月決まった日までに空き人数を報告します。締切は前月の中旬ごろに置かれることが多いので、給与の締めやおたよりの制作と重なりやすい時期です。月次の定例作業として、あらかじめカレンダーに入れておくのが確実です。

なお、在園していないお子さんが時間単位で通える「こども誰でも通園制度」の利用申込みは、入園の申込みとは別の枠組みで動きます。園で両方の受付が走る場合は、問い合わせのメモも一覧表も最初から分けておくと、あとで混ざらずにすみます。運用の細かいところは自治体差が大きいので、こちらも市区町村の案内で確かめてください。

空き枠の数え方でつまずかないために

報告する数字は「いま何人空いているか」ではありません。来年度、進級したあとに何人受け入れられるかです。ここが頭の切り替えどころです。

数える順番はこうなります。

  1. 年齢別の利用定員を確認する(運営規程・確認証に書かれている数)
  2. 在園児が進級したあとの各クラスの人数を出す(卒園児は抜ける)
  3. 定員から進級後の在籍数を引く
  4. 保育士の配置と保育室の面積で、実際にその人数を受け入れられるか確かめる
  5. 年度途中の受け入れをどこまで見込むかを、園長・主任と相談して決める

4番目を飛ばさないでください。定員の上では空いていても、担任の人数や部屋の広さで実際には受けられないことがあります。とくに0歳児・1歳児は配置の必要人数が多いため、採用が決まっていない段階で枠を出すと、あとで苦しくなります。配置の考え方は 保育士の配置基準を満たすシフトの組み方の基本 にまとめてあります。

5番目も、園として一度言葉にしておくと迷いが減ります。4月に定員をいっぱいまで埋めるのか、年度途中の申込みのために少し残すのか。園の方針が決まっていれば、毎月の報告で悩む時間がなくなります。年度途中入園の事務そのものは 年度途中の入園・退園の事務と日割りの考え方 をどうぞ。

数え終えたら、根拠を1枚残しておくことをおすすめします。定員、進級後の在籍数、差引、配置上の判断——この4行があれば、あとで「なぜこの数字にしたのか」を園長にも自治体にも説明できます。翌年の自分にとっても、いちばん親切な引き継ぎになります。

保護者からの問い合わせに、どこまで答えるか

募集の時期が近づくと、園にも直接の問い合わせが増えます。「今から申し込めますか」「うちは入れそうですか」「何人くらい空きますか」。

ここは線を引いておくと、あなたも保護者も楽になります。目安はこうです。

「入れそうかどうか」は、園ではなく市区町村が決めることです。答えられないのは冷たいからではなく、園が判断できる立場にないから——そう伝えられれば、保護者も納得してくださいます。「園からは確かなことが申し上げられないので、正確なところは市の保育課にお尋ねいただけますか。園の見学や保育の内容でしたら、いつでもお答えできます」。この言い回しを事務室に貼っておくだけでも、電話の緊張がずいぶん減ります。

利用調整の仕組みそのものは 保育園の利用調整・点数の仕組みと、園が押さえておく事務 に、見学の受け方は 保育園の園見学の予約をオンライン化する手順 に整理しています。

そのままにすると、どうなるか

毎年なんとか回せているなら、それは十分な仕事です。ただ、スケジュールが頭の中にしかない形には、いくつか弱いところがあります。

ひとつは、締切が重なった年に崩れやすいこと。空き枠の報告、二次の結果、進級の準備、年度末の書類——1月から3月はもともと重い時期です。そこに「今年から様式が変わりました」が加わると、一気に苦しくなります。

もうひとつは、担当が替わったときに引き継げないこと。募集の時期は年に三度しか来ないので、口頭では伝わりきりません。翌年の担当者が9月にゼロから調べ直すことになります。

そして、数字の根拠が残らないこと。空き枠をどう数えたかが残っていないと、翌年また同じところで迷います。内定後に「実は受けられなかった」となると、いちばん困るのはご家庭です。

逆に言えば、一年の流れと空き枠の数え方が1枚に残っていれば、忙しい時期でも同じ手順で回せます。去年の自分が残したメモに助けられる——事務の仕事が積み上がるのは、そういうときです。

明日やること

まず、今年の入園案内を1部、手元に置くところから始めましょう。市区町村のホームページで公開されていることが多く、まだ翌年度版が出ていなければ今年度版で構いません。一次の受付期間、二次の受付期間、年度途中の毎月の締切——この3つに印をつけるだけで、一年の骨格が見えます。

次に、それを園のカレンダーに書き写します。「9月:空き枠の報告依頼が届く」「毎月10日:空き人数の報告」のように、月と作業名だけで十分です。年間の事務カレンダーを作っている園なら、その中に足してください(保育園の年間事務カレンダー に土台の作り方があります)。

余力があれば、来年度の空き枠を仮に数えてみるのもおすすめです。正式な依頼が来る前に一度数えておくと、依頼が届いたときの作業が確認だけで終わります。全部を今日やらなくて大丈夫です。入園案内に印をつけた時点で、いちばん重い「調べ直し」はもう終わっています。

確認チェックリスト

募集の時期・様式・報告の方法は自治体によって大きく異なり、年度ごとに変わることもあります。ここに挙げた時期はあくまで目安として使い、実際の期限は必ず市区町村の入園案内や通知でご確認ください。判断に迷う点は、保育課の担当者に早めに一本電話を入れておくのがいちばん確実です。

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内定が決まったあとの動きは 入園申込の受付から内定まで、事務フローを整理する と 入園面接・健康診断で確認する書類と当日の段取り に続きます。申込みの土台になる就労証明のことは 就労証明書・保育の必要性の認定事由、確認のポイント を、きょうだいの申込みが重なる時期の注意は きょうだい同時入園・転園の受付ミスを防ぐ工夫 をどうぞ。名簿と空き枠をまとめて管理したくなったら 名簿・台帳の一元管理の始め方 もあわせて。

事務室の壁に貼った一年の募集スケジュール表を見上げながら、園長と並んで穏やかにほほえんでいる保育園の事務担当者

入園の可否を決めるのは園ではありません。でも、園が出した空き枠の数字ひとつで、この春どこかの家庭の一年が動きます。表には出ない数え作業ですが、たしかに誰かの暮らしにつながっている仕事です。まずは入園案内に印をつけるところから。一年の地図が一枚できれば、この秋の事務室は、去年より少しだけ落ち着いて過ごせます。

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