
保育園の職員健康診断とストレスチェック、実施と記録の基本
「そういえば今年、パートの先生たちの健康診断ってどうするんだっけ?」「ストレスチェックって、うちみたいな小さい園でもやらなきゃいけないの?」
職員の健康にかかわる手続きは、毎日の登園対応や保護者連絡に追われるなかで、つい後回しになりがちですよね。しかも対象になる人・ならない人の線引きがわかりにくく、いざ調べようとすると専門用語が並んでいて、手が止まってしまう——そんな声を園の現場でよく聞きます。
大丈夫です。全部を今日理解しなくても大丈夫。まずは「誰が対象で」「いつ・何回やって」「記録はどれくらい残すのか」——この3つだけを、一緒に順番に整理していきましょう。
結論:園がまず押さえるのは、①定期健康診断は年1回、常時使用する職員(一定時間働くパートを含む)が対象 ②費用は園(事業者)が負担 ③結果は「健康診断個人票」にして5年間保存の3点です。ストレスチェックは常時50人以上の事業場で義務、それ未満の園は当面は努力義務。細かい要件より、「対象者に毎年受けてもらい、記録を残す」——この習慣が整えば、健康管理と監査の不安はぐっと軽くなります。
何が起きているか:健康診断は「園がやるべき決まりごと」
職員の健康診断は、園の"やさしさ"や"任意のサービス"ではなく、労働安全衛生法で定められた事業者の義務です。大きく分けて、次の2つがあります。
- 雇入時の健康診断:職員を新しく雇い入れるときに行う健診。入職手続きの一部として押さえておきたいところです。
- 定期健康診断:在職中の職員に、1年以内ごとに1回行う健診。毎年の恒例業務になります。
対象になるのは「常時使用する労働者」です。ここが園でいちばん迷うポイントなのですが、正職員だけでなく、次の両方にあてはまるパート・非常勤も対象になります。
- 契約が1年以上(見込みを含む)続くこと
- 1週間の所定労働時間が、同じ仕事の正職員のおおむね4分の3以上であること
つまり「パートだから対象外」と一律に決めず、勤務時間で見るのがポイントです。なお、費用は原則として園(事業者)の負担とされています。

もうひとつ、ストレスチェックについても触れておきます。これは職員のストレスの状態を調べる簡単な検査で、常時50人以上の労働者がいる事業場に年1回の実施が義務づけられています。多くの保育園は50人未満なので、その場合は現時点では努力義務(やることが望ましい)という位置づけです。
ただし、法改正によって将来的にすべての事業場へ義務が広がる方向で準備が進んでいます。施行までにはまだ時間がありますが、「うちはいずれ対象になるかもしれない」と頭の隅に置いておくと、あとで慌てずにすみます。
具体例:園でつまずきやすいのはこんなところ
書類そのものより、現場で「あれ?」となるのは、たいてい次のような場面です。
- パート職員を対象から外していた:「非常勤だから」と一律に対象外にしていたけれど、勤務時間で見ると実は対象だった、というつまずき。もっとも起きやすいところです。
- 受診日がバラバラで管理しきれない:職員ごとに好きなタイミングで受けてもらった結果、「今年まだ受けていない人」が誰なのか把握できなくなるケース。
- 費用の扱いがあいまい:定期健診の費用を職員の自己負担にしてしまっていた、という取り違え。原則は園の負担です。
- 深夜・早朝勤務の扱いを見落とす:延長保育などで特定業務にあたる職員は、健診の回数が増える場合があります。自園にあてはまるかは、迷ったら労働基準監督署や社労士に確認で大丈夫です。
- 結果を受け取って終わりにしている:健診結果は個人票にまとめて保存する必要があります。ここが抜けると、監査のときに探し物が増えます。文書の保存については 文書の保存年限一覧 もあわせてどうぞ。
こうしたズレは、園で「今すぐ全部直さなきゃ」と抱え込む必要はありません。気づいて、対象者の一覧をつくって、毎年同じ時期に回す——そこまでで十分です。
影響:放っておくと健康管理と監査の両方でつまずく
健康診断は、職員が安心して長く働くための土台です。受診もれが続くと、体調の変化に気づくきっかけを逃してしまい、結果として急な休職や離職につながることもあります。人手が限られる保育の現場では、これは園全体の運営に直結する話です。
また、健診の実施と記録は、指導監査でも見られるポイントのひとつです。「対象者が受けているか」「記録が残っているか」が問われるので、日ごろから整えておくと、監査前の慌ただしさがぐっと減ります。監査に向けた書類のそろえ方は 指導監査でよく見られる書類とそろえ方 が参考になります。
とはいえ、これも「園がすべて背負う」話ではありません。健診は地域の医療機関や健診機関が実施してくれますし、集団健診をまとめて申し込める自治体・団体もあります。外部に実施をお願いし、園は対象者の管理と記録を担う——この分担を思い出すと、ぐっと気が楽になります。
明日やること:小さく3ステップで

- 対象者を職員名簿から洗い出す:正職員に加えて、勤務時間が正職員のおおむね4分の3以上で1年以上続くパート・非常勤も対象に入れます。名簿に「健診対象○/対象外」の欄をひとつ足すだけで、翌年からの管理がぐっと楽になります。判断に迷う人がいたら、社労士や労基署に相談で大丈夫です。
- 受診の時期と方法をそろえる:「毎年○月にまとめて実施」と時期を決めておくと、受診もれを防げます。近くの健診機関に集団で申し込めないか、自治体や関係団体の案内も確認してみましょう。費用は園負担が原則です。
- 結果を個人票にして保存する:健診結果は「健康診断個人票」にまとめ、5年間保存します。紙でもデータでも構いませんが、探しやすい場所に決めて置くのがコツです。個人情報なので、保管・共有のルールとあわせて整えると安心です。
一度に全部を整えようとしなくて大丈夫です。まずは「今年の対象者は誰か」と「いつ受けてもらうか」の2点を決めるところから始めれば十分です。
確認チェックリスト
全部できていなくて大丈夫です。ひとり事務の小さな園なら、まずは次の最低ライン2つだけ押さえれば日々は回ります。
- 【最低ライン】今年の定期健康診断の対象者(パート含む)を名簿で洗い出せているか
- 【最低ライン】健診結果を個人票にして保存する場所を決めてあるか(保存は5年間)
この2つができたら、余裕のあるときに次を少しずつで十分です。
- 定期健康診断を1年以内ごとに1回、時期を決めて実施しているか
- 新しく雇い入れる職員に雇入時の健康診断を案内できているか
- 健診の費用を園(事業者)が負担する扱いになっているか
- 深夜・早朝など特定の業務にあたる職員の健診回数を確認したか(迷ったら相談でOK)
- ストレスチェックの対象(常時50人以上)に自園があてはまるか把握しているか
- 健診結果は個人情報として、保管・共有のルールにそって扱えているか
よければ、こちらも
労務や監査まわりの理解を深めたいときは、次の記事もあわせてどうぞ。

職員の健康診断やストレスチェックは、最初は「誰が対象で、何をどこまでやればいいの」と誰でも迷います。でも、園がやるのは「対象者に毎年受けてもらい、記録を残す」こと。それだけで、先生たちが安心して働ける土台と、監査に向けた備えが、静かに整っていきます。今日は職員名簿を開いて、今年の対象者を確かめてみる——それだけで、来月の段取りが少し軽くなります。