夕方の保育園の事務室で、回収箱から出した保護者アンケートの薄い束を手に、窓の外を見ながら小さくため息をついている事務職員

保護者アンケートの依頼と回収|集まりやすく、本音が届く工夫

締切の翌日。玄関の回収箱を開けると、アンケートは60家庭のうち28枚。「まだの方はご協力をお願いします」と2回お知らせを出したのに、あまり増えていない。3回目の文面を考えながら、「みんな忙しいし、仕方ないのかな」と手が止まる——。

秋は、園の自己評価や行事のふり返りのために、保護者アンケートをお願いする園が多い時期です。第三者評価を受ける年なら、評価機関の利用者調査(保護者アンケート)の配布も重なります。

結論:保護者アンケートが集まるかどうかは、催促の回数よりも「頼み方」でほぼ決まります。整えたいのは5つだけ。①何に使うかを1行で伝える ②5分で終わる量にしぼる ③名前が分からない回答方法を用意する ④期限は2週間・お知らせは全体へ2回まで ⑤結果を保護者に返す。とくに⑤は、次の年の回収にそのまま効いてきます。

集まらないのは、保護者が非協力的だからでも、あなたの声かけが足りないからでもありません。「答える理由」と「答えやすさ」が、まだ保護者に届いていないだけのことが多いのです。そこは、紙1枚の工夫で変えられます。

何が起きているのか|アンケートが集まりにくい3つの理由

回収が伸びないとき、保護者の側ではたいてい次のことが起きています。

そしてもう1つ、見落とされやすいのが「去年答えたけれど、その後どうなったか知らない」という経験です。結果が返ってこないと、保護者にとってアンケートは「出しても何も起きないもの」になってしまいます。

具体例|同じ60家庭でも、頼み方で変わるところ

たとえば園児60人(60家庭)の園で、年に1回、保護者アンケートをお願いしているとします。

これまで見直したあと
設問22問(自由記述5か所)10問(選択式8問+自由記述2か所)
回答方法紙を担任へ手渡しフォーム(スマホ)か、紙を玄関の回収箱へ
名前クラス名と保護者名を書く欄あり記名なし(クラス名も任意)
依頼文「運営の参考にします」「いただいた声と園の答えを、12月のおたよりでお返しします」
期限1週間、締切後に個別に声かけ2週間、期間中に全体へ2回お知らせ

どれも、お金や新しいシステムが要る変更ではありません。回収率は園によって違うので「これで何割になる」とは言えませんが、保護者が「答える理由」と「答えやすさ」を感じられる形に寄せていくと、集まり方は少しずつ変わっていきます。

回収率は、回答数 ÷ 配った家庭数で見ておくと、毎年くらべやすくなります。60家庭で28件なら約47%、36件なら60%です。

影響|集まらないと、困るのは園の側だけではありません

アンケートの回答が少ないと、次のようなところで後から響いてきます。

逆に言えば、アンケートがきちんと集まって結果が返る園では、保護者との間に「言えば聞いてもらえる」という小さな信頼が育っていきます。

手順を小さく分けます|「頼む」「集める」「返す」の3段階

保護者アンケートの流れを「頼む」「集める」「返す」の3場面で示した図
頼む・集める・返すの3つをひとまとまりで考えると、次の年の回収まで楽になります。

1. 頼む前に|「何に使うか」を1行で決める

設問を考える前に、まずこのアンケートの使い道を1行で書いてみます。

この1行が、そのまま依頼文の書き出しになります。そして、使い道に関係しない設問は入れない、という判断の物差しにもなります。

2. 頼む前に|5分で終わる量にしぼる

目安は、選択式を中心に10問前後、自由記述は1〜2か所。スマホで答えて5分ほどで終わる量です。

設問をしぼるときのコツは3つあります。

3. 頼む|名前が分からない回答方法を用意する

本音を書いてもらうには、誰が書いたか分からないことが伝わっているのがいちばんです。

依頼文には、「お名前は書かなくて大丈夫です」「担任には個別の回答は見せず、まとめた結果だけを共有します」と、回答がどう扱われるかを書いておきましょう。

4. 集める|期限は2週間、お知らせは全体へ2回まで

期限は、土日を2回はさむ2週間くらいが目安です。平日は忙しい家庭も、週末なら時間がとれることがあります。

お知らせは、全家庭に向けて2回までにしておきます。

  1. 期間のまん中ごろ:「たくさんのご回答ありがとうございます。まだの方は◯日までにお願いします」
  2. 締切の2日ほど前:「締切が近づいています」

匿名のアンケートなので、誰が出していないかは、そもそも分からないし、分からなくていいものです。個別の催促はしない、と最初から決めておくと、事務の側も気持ちが楽になります。回収箱の数やフォームの回答数を、途中で一度だけ数えておけば十分です。

5. 返す|「いただいた声と、園の答え」をおたよりで

アンケートでいちばん大事なのが、この最後の段階です。集計したら、職員会議で共有したあと、保護者にも結果を返します。

おたより1枚で十分です。載せるのは次の3つ。

すべての声に応えられなくても大丈夫です。「読みました」「こう考えています」が伝わることが、次のアンケートへのいちばんのお願いになります。結果をまとめた紙は、自己評価の記録といっしょに保管しておくと、監査のときにも「保護者の意見を聴いている」ことを示す資料になります。

第三者評価の利用者調査があるとき

第三者評価を受ける年は、評価機関が保護者向けの利用者調査(アンケート)を行うことが一般的です。この場合、配布や回収の方法は評価機関の指示に従います。よくあるのは、園が封筒入りの調査票を配り、保護者が封をして回収箱へ入れ(または評価機関へ直接送り)、園は中身を見ないという形です。

事務の役割は、配る日と締切を評価機関と確かめて、園のアンケートと時期が重ならないように調整すること。同じ月に2つのアンケートが届くと、保護者はどちらにも答えにくくなります。進め方は評価機関や自治体によって違うので、事前の打ち合わせで確かめておきましょう。

そのまま使える文例

園の言葉づかいに合わせて、入れ替えて使ってください。

① 依頼文(おたより・連絡アプリ)

保護者のみなさまへ

園では毎年この時期に、保育や園の運営を職員でふり返っています。そのときの大切な手がかりとして、保護者のみなさまの声を聞かせてください。

・設問は10問、5分ほどで終わります
・お名前は書かなくて大丈夫です。担任には個別の回答は見せず、まとめた結果だけを共有します
・スマホのフォームか、紙(同封の封筒に入れて玄関の回収箱へ)のどちらでもご回答いただけます
・締切:10月30日(金)

いただいた声と、それに対する園の考えは、12月のおたよりでお返しします。

② 期間のまん中ごろのお知らせ

アンケートへのご協力、ありがとうございます。すでにたくさんのご回答をいただいています。
まだの方は、10月30日(金)までにお願いできればうれしいです。お手すきのときに、5分ほどで終わります。

③ 結果のお知らせ(おたより)

先日のアンケートでは、60家庭のうち36家庭からご回答をいただきました。お忙しいなか、ありがとうございました。

「行事の写真をもっと見たい」という声を多くいただきました。12月から、連絡アプリでの写真の掲載を月2回に増やします。
「お迎えの時間帯に駐車場が混む」という声については、職員で対策を話し合っています。決まりしだい、お知らせします。

どの文例も、「ご協力ください」より先に「何のために聞くのか」を書いています。お願いの理由が伝わると、保護者も「答えてみようかな」と思いやすくなります。

明日やること

一度に全部変えなくて大丈夫です。明日は、次の2つだけやってみてください。

  1. 次にお願いするアンケートの使い道を1行で書く
  2. 去年のアンケートを開いて、集計したけれど使わなかった設問に印をつける

この2つで、設問はたいてい半分くらいまでしぼれます。依頼文の書き出しも、その1行から始めれば迷いません。

確認チェックリスト

最低ラインは、①使い道を依頼文に書く ②5分で終わる量にしぼる ③結果を保護者に返す、の3点です。ほかは、次のアンケートのときに少しずつ整えれば十分です。

なお、自己評価や第三者評価の進め方、利用者調査の方法は、自治体や評価機関によって異なります。実施の前に、その年度の案内や評価機関からの説明を確認してください。

明るい午前中の保育園の玄関で、掲示板に貼られたおたよりを保護者が笑顔で読み、そばで事務職員がうれしそうに見守っている場面

アンケートの準備や集計は、表に出にくい仕事です。設問を考え、封筒を数え、自由記述を1枚ずつ読んで、ときには耳の痛い言葉にも向き合う。それでも、保護者の声を受け止める窓口を毎年開けているのは、事務の誰かの手です。

回収が少なかった年があっても、それはあなたの頼み方が悪かったわけではありません。「答えたら、ちゃんと返ってくる」を1回届けられれば、次の年の保護者は、もう少しだけ手を伸ばしてくれます。

まずは、使い道の1行から。その1行が、保護者と園をつなぐ最初の一文になります。

よければ、こちらも

保護者とのやりとりや、声を受け止める仕組みを整える記事を置いています。

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