
保育園の経理帳簿の整え方|現金・通帳・領収書を監査目線でそろえる
月末の夕方。金庫を開けて現金を数えて、帳簿の残高と突き合わせる。数百円だけ、合わない。もう一度数えても、やっぱり合わない——。
保育の現場で事務を担当していると、簿記を学ぶ時間がないまま帳簿の担当になることがあります。「これで合っているのかな」と不安を抱えたまま月末を迎えるのは、けっこうしんどいですよね。でも大丈夫です。園の経理で最初に押さえたいことは、そう多くありません。一緒に順番に整理していきましょう。
結論:経理帳簿は、簿記の知識より 「決まった日に、決まった3つを突き合わせる」習慣で整っていきます。①現金出納帳の残高と手元の現金、②預金の帳簿残高と通帳(ネットバンキングの明細)、③帳簿の1行1行と領収書などの証憑。この3つが合っていて、支払いを 誰が決めたかの跡 が残っていれば、監査で見られる会計の骨格はおおむね押さえられます。合わない日があっても、原因を書き残しておけば十分に前に進めます。
園の経理で扱う帳簿は、大きく分けると「日々の出入りを記録するもの(現金出納帳・預金出納帳など)」と「それをまとめたもの(総勘定元帳・計算書類)」です。事務担当者が毎日ふれるのは前者のほうで、ここが整っていると、後ろの集計も自然と楽になります。
何が起きやすいか
現場でつまずきやすいのは、たいてい次のようなところです。
- 現金の出し入れを 後でまとめて記入 しようとして、記入もれや立替精算のずれが出る
- ネット購入やカード払いが増え、領収書がPDFでメールに埋もれて 紙の綴りと分かれてしまう
- 保護者から預かった実費(給食費・行事費・卒園積立など)が、園の運営費と混ざって 追いにくくなる
- 通帳と印鑑を 同じ場所に、同じ人が 管理していて、監査で確認されたときに説明しづらい
- 電車代など 領収書が出ない支出 が「なんとなく」で処理されている
どれも、保育を回しながらひとりで事務を担っていれば起こりうることです。ずれること自体が悪いのではなく、ずれに気づける仕組みがあるか が大事なところなので、ここから小さく整えていけば大丈夫です。
監査で見られるのは「残高」より「跡」

監査で会計まわりを見られるとき、確認されるのは「残高がぴったり合っているか」だけではありません。もっと見られやすいのは、そのお金が動いた跡が残っているか のほうです。
- 誰が「支払っていい」と決めたのか(決裁・承認の跡)
- 何のために支払ったのか(見積書・請求書・領収書)
- 帳簿のこの1行が、どの書類に対応しているのか
つまり、帳簿は「数字の記録」であると同時に「説明できる状態にしておく道具」です。ここが見えていると、多少の記入もれがあっても落ち着いて説明できます。
なお、園のお金の中でも委託費(運営費)は、人件費・事業費・管理費という区分で見る場面があります。区分の考え方は 委託費の3区分と弾力運用の考え方 にまとめてありますので、帳簿を整えるときの土台としてあわせてどうぞ。
手順を小さく分けます
- 締める日を決めて、現金を数える:月末だけだと差が出たときに原因を追いにくいので、できれば週に1回、難しければ月に1回、日を決めて金庫の現金を数え、現金出納帳の残高と突き合わせます。合わないときは、無理に合わせず「◯月◯日 △△円不足、原因確認中」とメモを残すほうが、あとから追えて安心です。
- 通帳(ネットバンキング明細)と帳簿を合わせる:口座の残高と帳簿の預金残高を突き合わせます。ネットバンキングで通帳を発行していない口座は、月ごとに明細をPDFで保存し、ファイル名に年月を入れておくと探す手間が減ります。園の口座が複数あるときは、口座ごとに帳簿を分けておくほうが、結局は楽になります。
- 領収書を「帳簿と同じ並び順」で綴じる:日付順に綴じて、帳簿の行と対応させます。PDFで届く領収書は、月ごとのフォルダにまとめたうえで、紙の綴りには「◯月分のネット購入はデータ保存」と1枚メモを挟んでおくと、あとで探す人が迷いません。領収書が出ない交通費などは、出金伝票や精算書に日付・行き先・目的を書いて代わりに残します。
- 少額の支払いにも、承認の跡を残す:金額の大小より「園として決めた記録があるか」が確認されます。都度の伺い書が難しければ、月ごとの支出一覧に園長の確認印をもらうだけでも跡になります。備品購入のように見積もりを取る支出は、備品・設備の補助金と相見積もりの残し方 の考え方がそのまま使えます。
- お金を扱う役割を、ひとりに集めない:現金を出し入れする人と帳簿を記入する人、通帳を保管する人と印鑑を保管する人を分けるのが基本の考え方です。人数の少ない園ですべては難しいので、まずは 通帳と印鑑の保管場所を分ける、月に1回は園長が帳簿と現金を一緒に確認して署名する ——このあたりから始めれば十分です。
- 保護者から預かったお金を分けて管理する:給食費・行事費・卒園積立などの実費は、園の運営費と混ざらないよう区分して管理し、集金額と支出額がたどれるようにしておきます。集め方そのものは 副食費の実費徴収と免除の見きわめ方 も参考にしてください。
適用される会計基準(社会福祉法人会計基準など)、帳簿の様式、実費で預かったお金の会計処理、帳簿・証憑の保存年限は、園の設置主体・法人の経理規程・自治体によって異なります。この記事では具体的な様式や年限を断定していません。実際の取り扱いは、法人の経理規程と所管の自治体、顧問の会計事務所に確認してください。保存年限を園として一覧にしておきたいときは、文書の保存年限一覧の作り方 が土台になります。
確認チェックリスト
全部を今月中に揃えなくて大丈夫です。最初の2つだけ押さえて、残りは「できれば」で構いません。
まずここだけ(必須)
- 今月、現金を数えて現金出納帳の残高と突き合わせたか(合わない分はメモを残したか)
- 口座の残高と帳簿の預金残高が合っているか
できれば
- 領収書・証憑が、帳簿とたどれる並び順で綴じてあるか
- メールやPDFで届く領収書の保存場所を決めてあるか
- 領収書の出ない支出を、出金伝票や精算書で残しているか
- 少額の支払いにも、誰が承認したかの跡が残っているか
- 通帳と印鑑を、別の人・別の場所で管理しているか
- 保護者から預かったお金を、園の運営費と分けて管理しているか

経理の帳簿は、簿記が得意な人だけの仕事ではありません。決まった日に数えて、合わなければ理由を書き残して、支払いの跡を残す。この地道な繰り返しが、園のお金の説明できる状態をつくっています。今日は金庫の現金をひと通り数えてみる、それだけで十分です。数字が合わない日にちゃんと気づけたなら、その時点でもう帳簿は機能しています。表からは見えにくいこの確認の積み重ねが、園の運営を静かに支えています。
よければ、こちらも
会計まわりを整えるときは、次の記事もあわせてどうぞ。