夏の終わりの園庭で、すべり台の手すりの付け根に手を当てて、ゆるみがないかを確かめている保育園の職員

保育園の遊具・施設の安全点検|記録の残し方と月ごとの回し方

夕方、園庭から子どもたちが引きあげたあと。すべり台の手すりを何気なく握ったら、ほんの少しだけ、ぐらついた気がした。

気のせいかもしれない。でも、明日もそこを何十人もの子どもが握ります。園長に言うべきか、まず自分で締めてみるべきか、そもそもこの園の遊具は、いつ、誰が点検していることになっているんだっけ——事務室に戻って書類を探しても、それらしい記録が見つからない。

ここは、多くの園で同じことが起きているところです。点検そのものは、たぶん毎日されています。朝、保育士が園庭に出て、砂場に危ないものが落ちていないか見ている。それは立派な点検です。ただ、それが記録として残っていない。だから監査で聞かれると答えに詰まるし、何より、去年と比べて何が変わったのかが誰にも分からない。

結論:安全点検は、「毎日」「毎月」「年1回」の3層に分けると続きます。毎日は保育士が目と手で(記録は◯をつけるだけ)、毎月は点検表を持って園庭をひと回り、年1回は大型遊具を専門の業者に見てもらう。そして記録は、様式を増やさず1枚の表に集約する。この形にすると、点検が「増える仕事」ではなく「もうやっていることを書き留めるだけ」になります。

いま点検表がなくても、まったく問題ありません。今日から書き始めた記録が、いちばん新しい記録です。過去にさかのぼって作る必要はありません。

いま園で起きていること|点検が「記録として」残らない3つの理由

やる気の問題ではないんです。この仕事は、記録に残りにくい構造をしています。

だから、うまく回っている園がしていることは、実はシンプルです。書く量を極限まで減らして、置き場所をひとつに決めている。この記事は、そのつくり方の話です。

点検を3つの層に分ける

保育園の安全点検を毎日・毎月・年1回の3つの層に分け、それぞれ誰がどのように点検するかを左から順に並べた図
全部を同じ濃さでやろうとすると続きません。頻度と深さを3つに分けるのがコツです。

毎日|園庭に出る前の、目と手の確認

保育士がいちばん自然にできる層です。新しく何かを増やすのではなく、すでにやっていることに名前をつけるイメージで考えてください。

記録は、日付と「異常なし/要確認」に◯をつけて、名前を書くだけで十分です。連絡ノートや保育日誌の欄外に1行足す形でもかまいません。大事なのは、毎日書けることであって、詳しく書けることではありません。

毎月|点検表を持って、ひと回り

こちらは少しだけ丁寧に見る層です。月末や、行事の前にまとめて回すと定着しやすいです。

遊具の点検で見落としやすいのは、隙間と突起です。子どもの頭や体が入って抜けなくなるすき間ができていないか。服のひもやフードが引っかかる出っぱりがないか。とくに、修理したあとのボルトが出たままになっていることがあります。ここは、大人が見るのではなく、しゃがんで子どもの目の高さで見ると気づきやすくなります。

年1回|専門の目に見てもらう

大型の複合遊具や、設置から年数が経った遊具は、外から見えないところが傷みます。地面に埋まっている部分の腐食は、見た目ではまず分かりません。

年1回の点検は費用がかかるので、園長・法人と予算の話をセットで進めることになります。見積もりの取り方や記録の残し方は備品・設備の補助金と相見積もりの考え方がそのまま使えます。業者から受け取った点検報告書は、園の点検記録と同じ場所にファイルしておいてください。監査で「専門点検はしていますか」と聞かれたとき、その報告書が答えになります。

なお、園庭の遊具の安全については、国の指針や業界団体の規準が公表されています(国土交通省の「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」など)。園庭は都市公園ではありませんが、見るべきポイントの考え方は共通なので、点検表を作るときの下敷きとして参考にできます。また、教育・保育施設での事故防止については、こども家庭庁が「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」を示しています。まずは自治体からの通知や、園が加入している保険会社の点検資料を確認してみると、そのまま使える様式が手に入ることもあります。

記録の様式に入れたい項目

様式は、A4で1枚に収まるのが理想です。書く欄が多いほど、記録は続かなくなります。

欄書くことひとこと
日付・時刻点検した日毎日欄は月間の一覧表にすると省スペース
点検者名前(サインか押印)誰が見たかが残ることが大事
対象遊具名・場所園庭図に番号をふると書く手間が減ります
結果異常なし/要確認 に◯文章を書かせない
気づいたことあれば1行空欄でよい
対応いつ・誰が・どうしたかここがいちばん見られます
確認園長・主任の確認欄押印1つで十分

「対応」欄が、この表のいちばん大事なところです。異常を見つけた記録だけがあって、そのあとどうなったか分からない——これが、監査でも保険の請求でも、いちばん困る形です。逆に言えば、見つけて直したことがちゃんと残っている園は、強い。不具合があったこと自体は、責められることではありません。

記録を紙で持つか、タブレットで入力するかは園の運用しだいです。紙のほうが園庭で書きやすいという現場も多いので、無理にデータ化しなくて大丈夫です。切り替えを考えるときは帳票を電子化する前に決めておく運用ルールをご覧ください。保管の年限は、文書の保存年限一覧に安全点検記録の行を1つ足しておくと、次の担当者が迷いません。

不具合が見つかったときの動き方

点検表よりも、実はこちらのほうが大切です。見つけたあとの手順が決まっていないと、「見つけないほうが楽」になってしまうからです。そうなると記録は止まります。

順番はこれだけです。

  1. その場で使えなくする:ロープや養生テープで囲う、コーンを置く、遊具にカバーをかける。「気をつけて使う」は、子どもには通用しません。
  2. 職員に伝える:朝礼か連絡ノートで全員に。伝えていない職員が、良かれと思って囲いを外すことがあります。
  3. 子どもに伝える:「ここは今なおしているところだから、明日まで待ってね」。理由を言うと、子どもはちゃんと守ります。
  4. 保護者に伝える:使用中止が数日以上になりそうなら、掲示かおたよりで一言。「◯◯を点検のため使用を止めています。修理でき次第お知らせします」で十分です。書き方はおたより文例の基本が参考になります。先に伝えておくと、「なぜ使えないの」という問い合わせが減ります。
  5. 修繕を手配する:軽微なら用務や職員で、構造に関わるものは必ず業者へ。自分たちで直していいかどうか迷ったら、業者に写真を送って聞くのがいちばん早いです。
  6. 直ったことを記録する:点検表の「対応」欄に、日付と内容を書く。ここまでで1件が閉じます。

けががあった場合や、けがには至らなかったけれど危なかった場合は、事故・ヒヤリハットの記録のほうにも残します。点検記録とヒヤリハット記録は別の書類ですが、同じ出来事から生まれます。「ブランコの下がへこんでいて足をとられそうになった」はヒヤリハットであり、同時に点検の指摘事項です。両方に書くのは二度手間に見えますが、役割が違います。ヒヤリハットは「何が起きたか」、点検記録は「園の設備がどう管理されているか」を示す書類です。

監査では、どこを見られるか

指導監査で安全点検が話題になるとき、見られているのは「点検の実施」そのものより、仕組みがあるかどうかです。

つまり、きれいな記録より、途切れていない記録が評価されます。書式が手書きでも、字が読みにくくても大丈夫です。監査全体の進め方は指導監査の基本と書類のそろえ方に、指摘を受けたあとの流れは改善報告書のまとめ方にまとめています。

なお、園によっては安全点検の項目が運営規程や掲示物と関係することもあります。あわせて運営規程と掲示物のチェックも見ておくと、監査前の見直しが1回で済みます。

チェックリスト(コピーして使えます)

一度に全部そろえなくて大丈夫です。上から順に、できるところから。

まず仕組みをつくる

毎日の点検

毎月の点検

年1回の点検

不具合が見つかったとき

点検の終わった園庭で、子どもたちがすべり台やブランコで元気に遊び、それを職員がおだやかに見守っている場面

園庭の遊具は、目立つ仕事ではありません。何もなければ、誰も気づきません。子どもがすべり台をすべって、笑って、また階段を上がっていく。その当たり前の風景の裏に、手すりを握って確かめた誰かの手があります。

点検の記録は、監査のために書くものだと思うと重たくなります。でも本当は、「今日も大丈夫だった」を積み上げていく紙です。半年分たまったころ、去年より園庭が安全になっていることが、自分でも分かるようになります。

明日、ひとつだけやることを挙げるなら、園庭に出て、遊具の数を数えて紙に書き出すことです。すべり台、ブランコ、鉄棒、砂場、うんてい——それだけで、点検表の一列目ができあがります。様式づくりは、そこから始めれば十分です。

あの日ぐらついた気がした手すりに、もう一度手を伸ばした。それだけで、あなたはもう園の安全を担う仕事をしています。

よければ、こちらも

園の安全を守る記録は、いくつかの書類でつながっています。あわせてどうぞ。

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