
保育園の職員間の情報共有|チャットで申し送りもれを減らす整え方
「その話、聞いてないです」——お盆明けの朝、そう言われて胸がちくりとした人はいませんか。
早番の先生には伝えたけれど、遅番の先生には届いていない。連絡ノートには書いたけれど、パートの先生は開く時間がない。仕方なく自分のスマホから個人のメッセージアプリで送ったら、今度は夜中に返信が来てしまった。少ない人数でシフトを回していると、全員が同じ場所に集まる時間そのものが、そもそも作れないんですよね。
伝え方が悪かったわけでも、聞いていない人が悪いわけでもありません。人が入れ替わり立ち替わり働く場所では、口頭とノートだけでは物理的に届かないというだけのことです。
結論:チャットの導入は、ツール選びから始めなくて大丈夫です。先に決めたいのは次の3つだけ。①連絡の置き場所を1つに決める ②そこに載せないものを決める ③いつ見て、いつ見なくていいかを決める。この3つが決まっていれば、どのツールを使ってもうまく回りはじめます。
いま、園の連絡はどこに散らばっているか
まず、責める気持ちを抜きにして、現状を眺めてみましょう。多くの園では、職員間の連絡がだいたいこのくらいの場所に分かれています。
- 朝の申し送り(口頭)
- 事務室の連絡ノート・回覧板
- 更衣室やタイムカード横の掲示
- 保育ICTシステムの中の連絡機能
- 職員個人のメッセージアプリのグループ
- 園長・主任からの個別の電話やメール
置き場所が6つあると、「どこかには書いてある」けれど「どこを見れば全部わかるか」は誰にも分からない状態になります。申し送りもれの正体は、たいていここです。人の記憶力の問題ではありません。
連絡を「中身」で3つに仕分けます

置き場所を減らす前に、連絡の中身を3つに分けておくと迷いが減ります。
- 全体:園全体に関わること。行事の変更、来客の予定、設備の不具合、休園・時間変更の連絡など。全員が知っておきたい話です。
- クラス:そのクラスの中で回れば十分なこと。今日の活動の変更、担任間の申し送り、明日の持ち物の確認など。
- 個人情報:子どもの氏名と結びついた健康・家庭の状況、保護者からの相談内容、職員の勤怠や給与に関わることなど。
このうち、チャットに載せるのは「全体」と「クラス」だけにします。「個人情報」はチャットに書かず、園のICTシステムの記録欄や、鍵のかかる場所に置いた書類のほうに残す——この線引きをはじめに決めておくと、あとから「あの話、どこまで書いていいんだっけ」で止まらずに済みます。
保管や共有の考え方は 保育園の個人情報、保管と共有のルールを整える基本 にまとめました。あわせて園の規程と照らしてみてください。
手順を小さく分けます
一度に全部を切り替えなくて大丈夫です。次の順番なら、日々の保育を止めずに進められます。
- 「全体」の置き場所を1つだけ決める:まずは園全体の連絡だけ。ここを一本化するのが、いちばん効果が出るところです。すでに保育ICTシステムを入れている園なら、その中の連絡・掲示機能から試すのが自然です。入れていない園でも、業務用のチャットサービスから小さく始められます。
- 職員のアカウントを園として用意する:ここが大事なところです。職員個人のメッセージアプリのアカウントではなく、園が用意した業務用のアカウントにします。退職時にグループから外す、業務の記録を園に残す、私生活の連絡先を職員同士で交換しなくて済む——この3つが、園と職員の両方を守ってくれます。
- グループは最初は2つだけ作る:「全員」と「クラスごと」。最初からたくさん作ると、どこに書くか迷って結局どこにも書かれなくなります。足りなくなってから足せば十分です。
- 見る時間を決めて、みんなで声に出して合わせる:たとえば「出勤したら最初の5分」「休憩明け」の2回。返信は不要、読むだけでいいとルールにしておくと、「既読をつけないと悪いかな」という気疲れがなくなります。
- 2週間だけ、連絡ノートと並行する:いきなりノートをやめないのがコツです。両方に書く期間を短く設けて、「チャットだけ見れば足りる」と全員が実感できてから、ノートを畳みます。
- 月に一度、ふり返る時間を5分だけ取る:職員会議の最後で構いません。「見落とした連絡はあったか」「グループを足したいか」を聞くだけで、運用は自然と園の形に合っていきます。
サービスの機能や料金、使える端末の条件は年々変わります。導入の前には、その時点の提供元の案内で内容を確認してください。選ぶときの見方は 保育ICTシステムの選び方:迷わないための比較ポイント に整理しています。
勤務時間外の連絡を、どう扱うか
チャットを入れると、必ず出てくるのがこの話です。夜や休みの日に通知が鳴ると、便利さより先に疲れが増えてしまいます。
決めておきたいのは、次の2つです。
- 原則、勤務時間外には送らない。書きたいことが浮かんだら下書きに置いて、翌朝に送る。これだけで通知はぐっと減ります。
- 緊急時だけは別の経路にする。感染症の急な休園、災害、事故など、その日のうちに全員に届ける必要があるものは、あらかじめ「このときは電話(または一斉連絡)」と決めておきます。チャットに緊急連絡を混ぜないほうが、かえって確実です。
勤務時間外に業務の連絡へ対応した時間の扱いは、園の就業規則や労使の取り決めによって考え方が変わります。運用を決めるときは、園長・主任と一度そろえて確認しておくと安心です。災害時の一斉連絡は 保育園の災害・登園自粛の一斉連絡|届く手段を備える手順 も参考にしてみてください。
明日やること
明日ひとつだけやるなら、紙に「園の連絡が今どこに書かれているか」を書き出すことです。連絡ノート、掲示、口頭、個人のアプリ——思いつくまま並べるだけで構いません。
たいてい5つも6つも出てきます。その一覧こそが、これから一本化していく地図になります。ツールを比べるのは、そのあとで大丈夫です。
確認チェックリスト
- 園の連絡が今どこに散らばっているか、書き出したか
- 連絡を「全体」「クラス」「個人情報」の3つに仕分ける線引きを決めたか
- チャットに載せないもの(個人情報にあたる内容)を職員に伝えたか
- 職員個人のアカウントではなく、園が用意した業務用アカウントを使う形にしたか
- グループは「全員」「クラスごと」から小さく始めたか
- 見る時間を決め、「返信は不要」と全員に伝えたか
- 連絡ノートと並行する期間を決めたか(いきなりやめない)
- 勤務時間外に送らない原則と、緊急時の別経路を決めたか
- 月に一度ふり返る時間を、会議の中に入れたか
情報共有の仕組みづくりは、器用な人がいないと回らない仕事ではありません。置き場所を1つ減らすたびに、園の申し送りは静かに確実になっていきます。今日「聞いてないです」と言われたのは、あなたの伝え方が足りなかったからではなく、届く道がまだ一本になっていなかっただけです。その道を引きはじめられるのは、園全体の連絡を見渡している事務のあなたです。

伝える相手が多い園ほど、連絡はこぼれます。でもそれは、それだけ多くの人が子どもを見ているということでもあります。ひとつずつ道を整えていけば大丈夫です。今日は、書き出す紙を1枚用意するところまでで十分です。
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書類と情報のまわりを軽くする話を、いくつか置いています。
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- 紙の帳票をなくす前に決めておきたい保育園の運用ルール
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