
保育園の急な欠勤・欠員に備える、シフト応援体制のつくり方
朝、子どもたちがまだ来ていない時間に園の電話が鳴る。出てみると「すみません、子どもが熱を出してしまって……」。受話器を置いた瞬間から、頭の中で今日のシフトを組み直しはじめる——保育園で事務や運営を担っていると、この場面に何度も出会いますよね。誰が悪いわけでもないのに、埋め合わせを考えるのはいつも自分ひとり。心細くなる朝があると思います。
でも、急な欠勤は「起きるもの」として、あらかじめ順番を決めておけます。順番が決まっていれば、その朝に一から考えなくて済みます。今日は、急な欠勤・欠員が出たときの動き方と、平常時にしておく備えを、一緒に整理していきましょう。
結論:急な欠員への対応は、朝にあわてて考えるものではなく、平常時に「順番」を決めておくものです。当日の動きは4つ。①把握する(今日の必要人数と、足りない場所を先に確認する)→ ②園内で融通する(フリーの職員・主任・園長など、動ける人でまず埋める)→ ③外へ声をかける(パート職員やヘルプ登録者に、決めた順番で連絡する)→ ④記録する(誰がどう入ったか、配置をどう保ったかを残す)。このうち大変なのは③の「誰に、どの順で頼むか」を毎回ゼロから考えることです。ここをあらかじめ一覧にしておくと、朝の負担がぐっと軽くなります。
何が起きているか
急な欠員がつらいのは、作業量そのものより 「その場で全部を判断しないといけない」 ところにあります。
誰が休みか。今日のクラス編成でどこが手薄になるか。フリーの職員は動けるか。パートさんに頼めるか。頼むなら誰から連絡するか。子どもの人数は普段どおりか——考えることが一度に押し寄せます。しかも登園が始まる前の、いちばん静かなはずの時間に、です。
背景には、保育園ならではの事情があります。ひとつは、職員配置には基準があること。年齢ごとの子どもの人数に対して必要な保育士の数が決まっていて(配置基準)、欠員が出ても「今日は一人少ないままで」とはいきにくい仕事です。基準を満たすシフトの考え方そのものは、配置基準を満たすシフトの組み方 に土台をまとめてあります。
もうひとつは、欠勤の連絡が集中する時間が早いこと。子どもの発熱や、職員自身の体調不良は、朝いちばんに分かることが多いものです。つまり、判断のための時間がほとんどない状態で、配置を組み直すことになります。
だからこそ、朝に判断する量を、平常時のうちに減らしておくのが一番効きます。「その日に考えること」を「もう決めてあること」に変えていく、という発想です。責める話ではありません。備えがあるほど、当日のあなたが楽になる、というだけのことです。
具体例で見てみます

たとえば「朝、担任の一人から欠勤の連絡が入った」という場面を、順番に見ていきます。
① 把握する。 まず、今日の配置で どこが、何人足りなくなるか だけを確認します。ここで見るのは「園全体で一人減った」ではなく、「どのクラスの、どの時間帯が手薄になるか」です。乳児クラスは特に人数の余裕が少ないので、真っ先に確認したい場所になります。早番・遅番のどこに穴が空くかは、早番・遅番の勤務時間と休憩の整理 で普段の時間帯をつかんでおくと、当日の判断が早くなります。
② 園内で融通する。 次に、いま園の中で動ける人を先に当てます。フリー(クラスを持たない)の職員、主任、園長、事務を兼務している人など。多くの朝は、ここまでで配置が保てます。大事なのは、「まず園内で埋める」を先に決めておくことです。いきなり外に電話をかけ始めるより、園内で一度整えてから足りない分だけ外に頼むほうが、連絡の数も気持ちの負担も減ります。
③ 外へ声をかける。 園内で足りないときに、はじめて外へ連絡します。ここで効くのが、あらかじめ作っておいた「応援をお願いする順番リスト」です。たとえば「その日空いていることが多いパート職員」「短時間なら入れる人」「事前に応援を引き受けてくれている人」を、連絡しやすい順に並べておきます。朝に「誰に頼もう」と考えなくて済むだけで、負担はまったく違います。頼むときは「もし難しければ大丈夫です」と一言添えると、頼むほうも頼まれるほうも気が楽になります。
④ 記録する。 対応が落ち着いたら、誰が休み、誰がどう入り、配置をどう保ったかを短くメモに残します。これは後から自分を助けてくれる記録です。欠勤が続いた月に「どのくらい応援でしのいだか」が見えると、シフトや人員の相談を園長・法人にするときの材料になります。記録の残し方は事故・ヒヤリハットの記録の考え方と同じで、責めるためではなく次に活かすために残す、という姿勢で十分です。
ここまでが「当日の4つ」です。そして、この4つをスムーズにするために、平常時にしておきたい備えがあります。応援をお願いする順番リストを一枚作っておくこと、フリーや主任が入れる余地を普段のシフトに少し残しておくこと、そして急な休みが取りやすい雰囲気をつくっておくことです。休みにくい空気があると、体調不良でも無理に出勤してしまい、かえって全体がしんどくなります。有給を無理なくシフトに組み込む考え方は、有給管理を年5日取得までシフトに組み込む手順 が近いところです。
放っておくとどうなるか
備えがないまま急な欠員が続くと、特定の人にしわ寄せが集まりやすくなります。「いつも同じ人が応援に入る」「事務担当がそのままクラスに入り続けて、事務が止まる」——一時的には回っても、その人の疲れとして静かにたまっていきます。
また、応援の頼み方が毎回その場任せだと、頼む相手が固定されがちです。特定のパート職員にばかり連絡が集中すると、その人の負担が増え、断りづらさも生まれます。順番リストを作って何人かに分散できるようにしておくと、一人に偏るのを防げます。
そして、産休・育休や長期の欠員のような「予定できる欠員」は、急な欠勤とは別に、早めに代替を準備できる場面です。ここを当日対応と同じ引き出しで抱えると苦しくなるので、分けて考えておくと楽になります。長めの欠員に備える段取りは、職員の産休・育休と代替職員のそろえ方 にまとめました。
なお、応援で勤務が延びた職員の時間外や、休憩の取り扱いは、忙しい日ほど後回しになりがちです。あとで正しく数えられるよう、勤務が延びた日は記録に残しておきましょう。残業時間の管理は 保育園の36協定と残業時間の管理 に基本を整理しています。責める話ではなく、あとから自分の作業を増やさないための一手です。
明日やること
まずは、「応援をお願いする順番リスト」を一枚だけ作るところからで十分です。園内で動ける人(フリー・主任・園長・事務兼務)と、外へ頼める人(パート職員やヘルプ登録者)を、連絡しやすい順に並べるだけ。完璧でなくて大丈夫です。一度作っておけば、次に電話が鳴った朝、なぞるだけで動けます。
あわせて、当日の動きを4つの言葉でメモしておきましょう。確認(どこが何人足りないか)→ 園内(動ける人で埋める)→ 連絡(順番リストで外へ)→ 記録(誰がどう入ったか)。この順番が決まっているだけで、朝いちばんの判断がぐっと軽くなります。
全部を一度に整える必要はありません。今日は順番リストを一枚作る、それだけでも、次の「あの朝」の心細さは変わります。
確認チェックリスト
- 急な欠員が出たときの「当日の順番」を、確認→園内→連絡→記録で決めているか
- 園内で動ける人(フリー・主任・園長・事務兼務)を書き出しているか
- 外へ応援を頼む順番リスト(複数名)を作っているか
- 乳児クラスなど、人数の余裕が少ない場所を先に確認する流れになっているか
- 応援を一人に偏らせず、何人かに分散できるようにしているか
- 急な休みを取りやすい声かけ・雰囲気づくりを意識しているか
- 予定できる欠員(産休・育休・長期)は、当日対応と分けて準備しているか
- 応援で勤務が延びた日の時間外・休憩を記録に残しているか
- 誰が休み、誰がどう入ったかを短くメモに残しているか
よければ、こちらも
配置を保つシフトの土台は 配置基準を満たすシフトの組み方 に、早番・遅番の時間帯と休憩は 早番・遅番の勤務時間と休憩の整理 にまとめてあります。休みを無理なく回す工夫は 有給管理をシフトに組み込む手順、長めの欠員への備えは 産休・育休と代替職員のそろえ方 が近いところです。

急な欠勤は、なくすことはできません。でも、備えておくことはできます。順番を決めて、頼れる人を書き出して、記録を残す。それだけで、電話が鳴った朝に「どうしよう」と一人で抱える時間が短くなります。今日は順番リストを一枚作る、それだけで十分です。誰かの急な休みを、責めずに支え合える園の空気は、あなたのその小さな備えから静かに育っていきます。